上野 聡さんの『チョコレートはなぜ美味しいのか』を読んで、印象に残った部分をあげてみた
今まであまり読まなかった本を読みたいと思い、自分から遠い位置にある本を手にとってみました。
結果は正解で、今まで全くイメージできなかった分野のことを知ることができました。
【「食品物理学」という研究分野がある】
物理学にそのような分野があるとは知りませんでした。
物理学のイメージは宇宙や分子など、日常から遠いイメージがあったので、「食品」と結びつく「物理学」というのが新鮮なかんじがしました。
【チョコレートの原料であるココアバターの結晶には「Ⅰ型」から「Ⅵ型」までの6タイプがある】
【チョコレート特有の美味しい食感をもたらすのは、Ⅴ型結晶のココアバターだけ】
一度溶けたチョコレートを再度固めると風味が落ちる理由などがわかります。
チョコレートは大好きなのですが、美味しく食べているチョコレートを、結晶の観点から詳細に説明されているのが興味深いです。
研究をされている方にとってみれば、我々が何気なく食べているチョコレートも、全く異なる世界が広がるのだな、と思いました。
【美味しい食感のチョコレートをつくるために「テンパリング(tempering)」という技術が確立された】
【テンパリングの流れは、溶けたチョコレートの温度を「下げる」→「上げる」→「下げる」というふうに、固めるために一気に温度を下げるのではなく、途中にいったん「上げる」プロセスをはさむ】
美味しい食感のチョコレートをつくる為の技術が書かれています。
【テンパリングなしでⅤ型結晶をつくる方法は実用化されており、1996年に商品化されている(株式会社明治のガルボ)】
大好きな「ガルボ」が新しい技術でつくられていたことにびっくりしました。
何気なく食べているお菓子の裏にある技術開発には感謝してもしきれません。
【食品物理学の研究には「放射光施設」を用いる(簡単にいうと「巨大な顕微鏡」)】
よくわかりませんが、すごそうな装置や実験の話しが書かれています。
こういう部分で理系の研究に憧れます。
(自分は文系です)
このような全く異なる世界の話しに触れることができるのが、読書の醍醐味だと思います。
【冷凍食品の多様化により、昔は問題にならなかった「凍ったマヨネーズの分離」が問題になっている】
【以前は重大な問題にならなかった「マーガリンの粗大結晶化」が、マーガリンの材料が変わったことにより、深刻な問題として浮上している】
研究内容も興味深いのですが、時代の変化と共に、かつては問題にならなかったことが研究課題になっていること自体が興味深い現象だと思います。
研究開発の仕事はあまりイメージできなかったのですが、こういうことが課題になるのだ、と興味深く感じました。
【まとめ】
今まで触れることがなかった分野の本でしたが、面白く読むことがでしました。
繰り返しになるのですが、全く異なる世界の話しに触れることができるのが、読書の醍醐味だなと改めて思いました。
恐らく、この本を読んで自分の生活が変わるようなことはないと思います。
しかし、自分の知らなかったことを知るという体験は、自分にとってはかけがえのないことです。
そういった意味で、良い読書ができたな、と感謝の気持ちでいっぱいです。
【著者について】
上野 聡(うえの さとる)
食品物理学者。1961年神奈川県生まれ。広島大学大学院生物圏科学研究科生物機能開発学専攻食資源科学講座教授。広島大学大学院生物圏科学研究科博士課程後期修了。同生物生産学部講師、助教授を経て2010年生物圏科学研究科教授。専門は食品油脂の物性・状態変化の観察。チョコレートやマーガリン中での油脂の状態を調べたり、品質が劣化する際の油脂成分の変化などを調べている。