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【読書メモ】『日本人の勝算 人口減少✖️高齢化✖️資本主義』

【インデックス】

◾️タイトル:『日本人の勝算 人口減少✖️高齢化✖️資本主義』

◾️出版社:東洋経済新報社

◾️著書:デービッド・アトキンソン

◾️読了:2019年4月21日


◾️感想◾️

・読むのに数日必要かなと構えていましたが、読み始めたらあっという間に読めました

・海外の多くの論文を紹介しながら論点を展開されているので、最新の研究に触れることができたのが良かったです

・統計理論を用い相関係数を挙げながら論点が展開されているので、今までのイメージと現実が乖離している点がわかったのが良かったです

・本書に書かれていることはほとんど正しいと思いますが、特に最低賃金の全国一律化には強く同意します


◾️概要◾️

【本書の提言】
①生産性向上をコミットして高生産性・高所得資本主義を実施する
②それを可能にするために企業の規模拡大を促す、統合促進政策を実施する
最低賃金の継続的な引き上げを行う
④世界が驚くほどの高い質を担保した、本格化な成人の再教育制度を実施する


【デフレ圧力の常態化】

◾️需要要因
・人口減少
少子高齢化
・65歳以上の人口構成比が上がることによる政治的なデフレ圧力
・高齢化に伴い製造業からサービス産業に経済構造の中心が移動することによるデフレ圧力
・外国資産売却によるデフレ圧力

◾️供給要因
・企業の生き残り競争によるデフレ圧力
労働分配率の低下によるデフレ圧力
最低賃金が低いことによるデフレ圧力
・低賃金の外国人労働者を迎えることによるデフレ圧力


【「高付加価値・高所得」資本主義への転換】

・経済成長を「人口増加要因」と「生産性向上要因」に分けて考える

◾️Low road capitalism
・「低次元資本主義」、「低付加価値・低所得資本主義」
・価格の競争
・大量生産のものが主流
・役割が細分化され特化した仕事が多い、分業制的な仕事
・仕事の自主性が低く、管理者と労働者は明確に分かれている
・賃金レベルが相対的に低くなる
・「いいものをより安く」

◾️High road capitalism
・「高次元資本主義」、「高付加価値・高所得資本主義」
・価値の競争
・商品とサービスの種類が多く、価格設定も細かく分かれている
マーケティング能力や調査・分析能力、問題解決能力や人を説得する能力、仕事を改善する能力、組織を変える能力
生涯学習を通じて常にスキルアップさせることが求められる
・管理側と労働側の壁が低く、労働者から社長までの階層が少ない
・一般社員の給料の水準は相対的に高くなる
・「よりいいものをより高く」


【供給過剰を調整するための輸出振興】

・人口が減少する日本ではあらゆるものの国内需要が減少する

・人間の数の減少や高齢化によって不要になる設備を算出し、輸出に回せる設備を洗い出し、それを使った輸出を支援する

・人口一人当たりの輸出額を見ると、日本は世界で44位、対GDP比では117位

・輸出をする企業は生産性が高い

・輸出をするから高くなるのではなく、生産性の高い企業が輸出する

◾️輸入と生産性
・Intermediate商品の輸入は、生産性向上との相関が強い
・生産性の高い企業ほど、輸入による生産性向上効果が大きい
・輸入による学習効果は認められる

・日本の輸入比率は世界的に見てもきわめて低い水準

・日本の生産性は他国と比較すると相対的にかなり低いので、日本より生産性の低い国から輸出するのが現実的

・生産性を高めてから世界市場に打って出るのが、日本が今後たどっていくべきステップ


【企業規模拡大のためのM&A促進】

・日本では20人未満の企業で働いている労働者の比率が全労働者の20.5%、30人未満まで含めると29.9%と、異常に高い

・先進国の場合、小規模企業に勤める労働者の比率と生産性の相関係数は0.93と、非常に高い

・日本が抱えているさまざまな問題の根源を究極的に探っていくと、小規模企業に勤めている労働者比率の高さに行きつく

・ただ単に人が多い、少ないによって違いが生まれているのではなく、規模が大きくなると設備が充実することが、生産性の違いの原因

・付加価値に関しては、大企業と中小企業の差は、製造業よりサービス業においてより大きい


最低賃金引き上げで生産性を高める】

最低賃金と生産性の間に、強い相関係数が認められる(相関係数は0.84)

◾️最低賃金引き上げが望ましい6つの理由
①もっとも生産性の低い企業をターゲットにできる
②効果は上に波及する
③消費への影響が大きい
④雇用を増やすことも可能
労働組合の弱体化
⑥生産性向上を「強制」できる

◾️最低賃金を導入した後、イギリスで何が起きたか
・失業への影響はなかった
・サービス業がより影響を受けた
・生産性が向上した
・生産性の高い企業ほど雇用を増やした
・人を減らしても効果は見られない


【日本に好循環をもたらす「要石(かなめいし)」の政策】

◾️1人・1時間当たりの社会保障費負担額
・2018年 約817円
・2040年 1642円
・2060年 2150円
・今の最低賃金では、とても対応できない

・人口が減る分を補って経済を縮小させないためには、毎年1.29%ずつ生産性を向上させる必要がある

・1990年から2015年までの25年間、日本は平均で年0.77%しか、生産性を向上できていない

GDPを維持するためには日本人の給料が上がることが必要だが、経営者が自ら進んで賃上げに動くことはあり得ないので、「最低賃金の引き上げ」という工夫が必要

・2016年のWorld Economic Forumのランキングによると日本の人材評価は世界第4位、つまり生産性を上げられる人材は日本にいる

◾️最低賃金引き上げによるメリット
①企業の規模の拡大に最低賃金が貢献する
最低賃金を引き上げれば、需要者の減少により企業部門が引き起こすデフレ圧力を緩和できる可能性が高い
最低賃金で働いてるもっとも多くの労働者は女性であることから、女性活用にもっとも大事な政策は最低賃金の引き上げ
④日本の最低賃金の水準はあまりに低いので、これを大きく引き上げれば格差社会の是正につながる
⑤地方創生政策を掲げるのであれば、最低賃金を全国一律にすることを真剣に検討すべきである
最低賃金引き上げは「少子化対策」にもなりうる

最低賃金を今までの「社会政策」から「経済制裁」へと位置づけを変えるべき

◾️生産性向上と5つの要素との相関関係
①アントレプレナリズム(相関係数0.91 きわめて強い関係)
②労働者1人当りの物的資本増強(相関係数0.77 かなり高い数字)
社員教育によるスキルアップ相関係数0.66 高い相関)
④技術革新(相関係数0.56 決して高くなく、技術革新だけでは生産性を上げるのには不十分であることを示唆している)
⑤競争(相関係数0.05 きわめて低い、たったの0.05)


【教育を子ども向けから大人向けに拡張する】

・欧州と比べると日本の雇用規制は厳しいと言えないが、日本の生産性の水準やその成長率は欧州より低い

・解雇規制と生産性の相関係数を計算すると、かなり低い0.32だった

・解雇規制が強くても生産性が高い国もあれば、生産性が相対的に低いのに解雇が容易な国もある

・イギリス政府の分析では、社員教育によるスキルアップと生産性向上の相関係数は0.66なので、きわめて大事な要素といえる

・新しい技術を導入したアメリカでは、労働者がやっていた従来の仕事を機械化したのではなく、新しい技術の効果を最大限に引き出すために、組織と仕事のやり方を技術に合わせて抜本的に変えた

・高齢化が進めば進むほど、人生の初期に受けた教育だけでは十分ではなくなり、生産性の向上が難しくなる

,真剣に高生産性・高所得経済への移行を目指すならば、高齢者大国の日本には本格的な成人の再教育制度が不可欠になる